《学歴と学校歴》

 今の学校教育は偏差値というへんな物で輪切りしまして、五段階評価してテストの結果がよければこの子はよく勉強の出来るいい子だと評価します。では、テストというのは、何でしょうか。
 終わったことをどれだけ覚えたか、覚えなかったかということでしょう。教わったことを覚えさえすればテストの点数はいいんですよね。教わったことを覚えなければテストの結果は悪いんです。覚えたか、覚えなかったか。たかがそれだけの事ですよ、そうでしょう。
 私は、覚えなくっていいって言ってるんじゃあありません。覚えるということは大事なことですが、人間が大人になって社会へ出て問われる能力は覚えるということだけではございません。
 ます何よりも他人を頼らないで、自分で考える、自らが主体的に考える能力。そしてその考えをまとめて相手に伝える伝達能力。表現能力。コミュニケーションの能力。人間関係の能力。こういうものが一番大切でしょう。
 また、私が今まで出会った人の中でも、特別に学問等をしていなくても直感、ひらめきの能力のすばらしい方がいらっしゃいます。
 直感力、又、物を創り出す創造性の能力。クリエイティブな力。―。
 日本民族、日本人は創造性に欠けている、とよく言われますが、今の教育システムではだめですね。このままだはだめです。これを改めませんと日本人の創造性の発揮ということはなかなか難しい。
 物を創り出すクリエイティブ、あるいはイマジネーション。空想能力ですが、空想能力がなかったら小説も詩も書けませんね。人間の能力には色々な物さしがあるんです。
 たかが覚えたか、覚えなかったか、たった一つのものさしではかっている。
 そして、進学、進学でしょ。国をあげて、学校でも家庭でも取り組んでいらっしゃるのはそれですよね。肝心要の人間の心をどう育てるのかというようなことは、そっちのけでございます。ですから情意の不安定な人格未熟な、人格きわめて幼稚なエリートが幾らでもそだっている。そんな大学卒をたくさん育てて、世の中どうなりますか。
 そう申しますと、「先生、そうおっしゃいますけどね、世の中実際、学歴社会でございますよ。」と、こうおっしゃる。「やっぱり学歴は大事です。」と、おっしゃいます。
 学歴とは何ぞや。読んで字のごとく学びの歴史と申します。学びの歴史というのは人間死ぬまで続きます。日本の親たちが問題にしているのは学歴なんかではなく学校歴です。
 どの学校にわが子を入れるか、あの人はどの学校を出たのか。
 学校というのは施設、入れ物です。
 その入れ物のレッテルで、やれ東大だ、早稲田だと、評価なさるでしょ。
 こんなのは学歴ではないですよ、学校歴です。皆が問題にしてますのは学歴ではなく学校歴を問題にしています。目の色を変えて取り組んでいらっしゃいます。どの学校に入れるか、何人入ったか、とか。学校でもそれを一所懸命競争していらっしゃる。進学率がどうであるとか、ね。
 前にも話したことがありますが、松下電器松下幸之助さん、この方は、小学校四年生中退の学校歴しかありませんが、「経営の神様」と言われ、世界中の経営者に尊敬されましたね。
 また、本田技研本田宗一郎さんも、小学校卒ですが「世界のホンダ」といわれる企業を築き、また当時のイギリス首相サッチャーさんが来日した折り、イギリス最大の自動車メーカー、ブリティッシュ・レイランドの経営再建を頼まれ、見事にそれを成し遂げました。
 推理小説家の松本清張さんもしっかり。全部独学です。
 人間、問題はやる気です。人間千人いれば千人ちがうのです。人間としての誇りを持ってほしいものです。
 トーマス・エジソンは小学校にたった三ヶ月しかいってない。
「なぜ?」「なぜ?」ときくばかりですので、先生に退校させられた、発明王エジソンがです。「なぜ?」「なぜ?」が続くので授業にならないからです。
 アルベルト・アインシュタイン。四歳で知恵おくれといわれ、九歳までことばも満足にしゃべれなかった。
 学校の成績は最低の劣等児です。十四歳のとき叔父さんが、数字の手ほどきをしてくれてからメキメキとよくなってアインシュタインの天災が芽生えました。
 学校のテストが悪くても心配はありません。
 「家の子はエジソンだ、アインシュタインだ」と思って下さい。早熟な子もいれば、大器晩成型の子供もいる。あわてなくてもいい。親がムキになるから子供がダメになる。
 ダメ、ダメというからやる気を失ってダメになる。お子さんのイイ所を見つけてほめてやることです。
「あんたはおもいやりがあってやさしいネ、大好きよ」と、ほめるとイキイキしてきます。いい所は、ドンドンのびてくるのです。テスト、テストで評価してはなりません。
 私は日本の子が哀れでならん。日本では五万人も不登校児がいます。
 問題はヤル気なんです。人間は・・・。ヤル気を起させるにはどうしたらいいか。
 そのためには、実現可能な目標を与えることなのです。
 人間として大切な心を育てるといいましたけれど、あのイジメの問題。イジメというのはなんですか、弱い者を集団で襲うでしょ。弱い者を強い者が襲うのはケダモノです。いじめられる者の痛みも涙もわからないのです。友情のかけらもない。
 なぜそういうことの大切さを教えないんですか。テストより前に。



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