《心を病む子ども達》

 今までたくさんの非行少年少女と出会ってきました。
 福岡県下のいくつかの市や少年センターから頼まれましてね。非行少年少女を補導する補導員という方がいらっしゃいますね。その方々ともお話しする機会もありました。そんな経験から申しますと、非行少年少女と呼ばれる子供達には三つの特徴があります。共通項があります。
 第一は、感受性の鋭いお子さんです。感受性が鋭いから、自尊心が傷つくんですよ。
 だから皆さん、感受性の鈍いお子さんは心配ないですよ。非行に走らないから。
 自尊心が傷つかないでしょう。プライドが。非行少年少女には感受性の鋭いお子さんが多いのです。
 第二は、我慢する事を教わってない。我慢できない。
 「俺が俺のバイクぶっ飛ばして何が悪い」と、自分を押えることができないお子さんです。
 第三は、例外なく親の愛に飢えている。愛情欠乏症におちいっている。
 親の愛とは、どういうことなのか。愛とはなんぞや。すれにちょっと触れておきたいと思います。漢字で書くと、受けるという字の中に心を入れると「愛」になりますね。中に「ノ」がついていますね、だから「ああそうなの」と「の」をつけてやさしく受け入れるのです。心を受け入れるということからいうと、気持ちを解ってあげる、ということです。
 気持知を分かるにはどうしょたらいいでしょうか。わが子の気持ちを分かるにはどういしたらいいでしょうか。
 聞くことです。聞かなければ分かりませんよね。聞きもしないで分かるはずがありませんよ、ところが聞こうとしないで批判ばっかりしますね、親は。批判をする、説教しますよね。
 そして、愛の反対は憎しみですよね。
 ところが親子、夫婦、全ての人間の関係で一番冷たいのは憎むことかというとそうじゃないですね。一番冷たいのは、無関心ってことですね。そうでしょう。無関心、こんな冷たい関係はありませんね。「どうなろうと知らない」って事ですからね。
 子供にとって親から無関心になられるということは、生きて行けないということです。
 親の保護がなければ生きて行けませんから、無関心になられては大変ですよ。だからと言って愛を求めて愛が得られない、気持ちは分かってもらえない、話は聞いてもらえない。
 どうしたらいいんでしょうか。憎まれる他に方法ないですね。
 愛はプラスの関心であり、憎しみはマイナスの関心ですね、関心があるから憎いんでしょう。関心がなかったら無関心ですよ。無関心になられる位なら憎まれた方がまだましですね。
 自分に関心もってくれるんだから。
 だから、これでもか、これでもか、と、どんどん、どんどんエスカレートして親を困らせることをわざとする。これでもか、これでもか、解らんか、まだ解らんか、という悲痛な心の叫び、これが子供の非行であります。
 私がじっくり話を聞くでしょう。それまで聞いてもらったことがない、気持ちを分かってもらったことがないんですよ。だから私が、気持ちを、分かろう分かろうと思って一所懸命聞くでしょう、そんな子供の話をね。そうしたらそのうち泣き出す子がいるんですよ。
 「先生ありがとう、こんなに聞いてもらったのは、はじめてです」といってね。
 「聞いてもらってアリガトウ」という、非行少年少女がいるんですよ。
 皆さん方、お子さんの話を聞いてらっしゃいますか。親子の対話とよく言いますよね。対話というのは子供の話を聞くのが対話です。親の説教をするのが対話ではありません。話し合いというのは聞く努力のことです。相手の話を聞く努力をしないから話し合いがうまく行かないのです。大人どうしでも一緒です。皆んな聞いてもらいたい。自分の悩み等、親に聞いてほしいのです。それほど子供は親に聞いてほしい。身近に話を聞いてくれる大人がいる限り子供は絶対に非行に走りません。


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