『はじめに』

はじめてお目にかかりますが、福岡からやって参りました船木英示と申します。
ふだんは経営コンサルタントを仕事としております私が、どうして教育について話をするようになったかと申しますと、約20年程前、長崎の新聞に「現代の親子の在り方」について連載してくれないかと言われ、「子の心、親知らず」と言う題で1年間連載いたしました。
これを機に、教育委員会やPTAより声がかかり、このような講演に九州・四国・中国の隅々まで出かけて行っております。
また、福岡市より依頼を受けて、市民の場のカウンセラーという仕事も致しております。
小児ゼンソク・チック症(意味のない動作を繰りかえす心の病気)家庭内暴力・暴走族・万引き・シンナー遊び・不純異性交遊など、いろいろな問題が持ち込まれてきます。

昨年、福岡市では小学校6年生の売春補導がありました。いったい世の中はどうなっているのだろうかと、と思わずにはいられません。相談にこられる両親はきまって、「先生、うちの子はどうしてこうなってしまったのでしょう。私共は、一生懸命子供の事を思って今日まで育てて参りました。なのになぜこんな報いを受けなければならないのでしょうか」と泣いて訴えられる。
なぜ、子供達がゆがんでいくのでしょうか。私は、最初に答えを申し上げておきたい。先に結論を申し上げておきたい。
「問題の子供があるのではない。問題の親があるのだ」という、その事を、親自身全然気づいていらっしゃらない。子供の側に原因があるとどなたも思っていらっしゃる。
そうじゃあない、親の方こそ問題があるのだと気づいていらっしゃらない。そして、一生懸命になって親の期待にそむく子供を育てていらっしゃる。
親がムキになればなるほど子供がゆがんでいく。これはもう悲劇以外の何ものでもございません。わが子の幸福を願わない親はこの世におりません。なのに、やっていることとは、一生懸命になってわが子をいじめていることに気がつかない。
およそ、人が何か悪いことをする場合に、いま自分が悪いことをしているという自覚がございますと、良心がとがめますからたいして悪いことはできないものです。悪いことをしているという自覚がございませんと、人は相当悪いことをしているものです。
一番悲劇的なのは、いいと思って悪いことをなさる。親自身が、よいと思ってやっていらっしゃる、だから悲劇なのです。一生懸命やるポイントを間違えていらっしゃる。どこに間違いがあるのか、それを一人でも多くの人にわかっていただきたくて、私は、「子の心、親知らず」と訴えております。
「親の心、子知らず」とは昔から言われておりますが、親の心を子が知らないのはあたりまえのこと、わかりきったことです。子供は親になった経験がございませんから、親の心がわからなくてあたりまえのことです。わからなくても責められることはない。
しかし、日本中の親達は、自分達が子供時代を経験しているのに、あまりにも子供達の気持ちをわからなさすぎる。あるいは無視していすぎる。私には、そう思えてなりませんので、20年前よりわざと題をさかさまにして、「子の心、親知らず」と訴えております。

以上