《自己催眠》

 それでは自己催眠の話です。
 さて皆さん両手をしっかり握って下さい。
 ひとさし指だけをまっすぐ伸ばします。
 指先に注目します。だんだんくっついていくぞ、いくぞと自己暗示します。手をしっかり握って合ってやってみて下さい。くっついていくぞというとくっつきます。へそ曲がりはダメです。
 まず、導入部です。その人の被暗示性を見るのです。
 例えば少女を催眠に誘導します。軽く目を閉じて、両手はヒザの上に乗せてます。「右手が軽くなってヒザから離れて上へ上へと上っていきますよ」と「軽くなってきた、それ、もっと軽くなるぞ」「軽い。」「離れるぞ、それ離れた」「離れた」という。「もっと上る」というと、手が上がってしまう。「手のひらが額に近ずくぞ」「それ近ずく」「ソーレ!くっつくぞ」
 「手が額にぴったりくっついた。」
 「もう離れない。」「もう離れない。」「離してごらん」と言います。
 離そうとすればする程努力逆転の法則に従って、もう、離れません。不動金縛り、離れないよというメッセージが与えられ、離そうと、もがけばもがく程、離れなくなる。くっついてしまう。
 離れません、引き寄せられてしまう。すごい力が出てきます。
 真っすぐ立たせて、身体が固くなるというメッセージを与えるとピーンと硬直して、丸太棒のようになってしまうのです。
 硬直した身体を机と机の間に横たえると、後頭部とカカトで全部の体重を支えて反っくりかえっています。
 返っくりかえった身体に大の男が乗ってもビクともしないのです。
 もっとも松田聖子の上に小錦が乗ったら、重すぎてダメ。あの人は重すぎます。
 本人の体重の三倍までが限度です。
 自分の体重の二倍でしたら平気で支えています。
 無意識層では、常識ではとても考えられない力が出てくる。これを潜在能力という。人の中には潜在能力が存在しています。無意識層を動かすと、その中にある能力が見事に顕在化します。表面化します。失天性脳性マヒとか、精神分裂病の患者とかですと催眠のメッセージが、心にとどかず、無駄に終わります。
 病気のない人は誰でもかかります。そういうことは、人間本来、それだけの能力をもっているということです。
 中にそのことに全然気づかず、そんなこと出来るかと勝手に思い込んでいる。できないものと決めてしまっているカマスと同じ。できないものと勝手に思いこんでいるのです。
 自分の能力がこの程度と思っていたら、その少なくとも十倍の能力を持ち、能力を秘めているんです。そのことには全然気付かず表面の一割しか分からないのに、そんなことできないと思いこんでいるのが人間です。
 催眠をやればすぐ分かります。
 私もド肝をぬかれたことがあります。
 まずは入門編から。
 運動支配の段階といいます。催眠の一番軽い状態がこれです。催眠でなくてもこの能力が出てくる時があります。無意識と意識が同じ方向を向いた時に出ます。エネルギーが同じ方向に向くというのは、どういう時でしょうか。
 我を忘れた時です。
 無我夢中になった時。よく言われる火事場の馬鹿力です。
 めったにそんな状態になりません。普段はそんな能力が自分にあるとは思っていません。
 これは軽い時の場合、深い、催眠の場合はどうなるかについてお話します。