《M製作所の例》

 部下を育てるのも、目標を達成する、その喜びを励ましてあげるのが一番の良法です。
 賞めるのがキーポイントです。これを企業の経営に応用している会社が愛知県にあります。
 豊橋市の近くにあるM製作所。資本金が九〇〇〇万円。従業員百十五名。中小企業ですが機械の発明にとり組み企業を発展させて来ました。
 新案特許の申請が現在千件を超えている会社です。
 大体、年間五十件の割で、特許申請してます。昨年は九五〇件、その前年は九〇〇件というわけ。一年は五十二週ですから一週間に一件の割合で出していることになります。
 発明機械を世界三八ヶ国に輸出してます。
 輸出産業は、円高のデメリットをうけます。
 貿易黒字を解消するため当時の大蔵大臣の竹下登は円のレートを高くして二五六円あれよあれよで一三七円。
 三年前は二七六円位のものが今は一〇六円で、買えます。
 輸入業者は大儲け、輸出業者は泣くに泣けない。円高打撃倒産が続いています。
 経済企画庁が発表していますが、多くの企業が廃業に追いこまれているのです。
 倒産ではなく廃業です。しかし、M製作所は世界でどこも作っていないものを製作する会社ですの、円高に影響されません。
 相変らず悠々としてやっている。七五名が株主、年四割配当を二十年以上つづけている。高給取りで高率配当。
 まず社内蓄積をしています。総資本百十億円の内自己資本九十億円。
 財テクなどせず、きちんと発明し高収益をあげて、社内留保分を高めているのです。社員の内七五名が、中学卒業者、地元の人たちです。
 大卒は五〜六人しかいません。なぜ義務教育しか受けていない人が発明集団、頭脳集団を形成するにいたったか。どういう方法をとったか。
 M製作所は毎年入社希望でやってくる中学生に社長が面接の時こういうのです。
 ”四〜五人もしくは、二〜三人しか取りません。”
 ”正直で素直な子を採用している。”
 ”解らないことは解りません。とすぐ正直に言える人を採用する。”
 ”君達、うちの会社に入ったなら工業高校の夜間部に行きなさい。行かない物は採用しません。”
 社員は当然工業高校の夜間部に進学します。
 会社はビタ一文も学費を援助しない。
 高校に自前でいけるだけの給料を新入社員にでさえ、払っているからです。