《夜間部卒業》

 定時制高校の四年生を卒業すると、社長がお祝をしてくれる。四〜五人の卒業生のお祝をして、社長が「よく、頑張った、お祝い」といって新調の背広を一着ずつ出します。
 “四年間学費はどうしたかね。”
 “給料でまかないました。”
 “通学定期は?学用品は?参考書は?”
 “全部供与でまかないました。”
 “君たちは立派だ。世の子供達が親の世話で高校へ行く時代に自分のお金で高校を卒業した。自分の力だけでやりとげた。心から敬意を表する。ところで、聞くところによれば、世間の会社はいろいろと補助をしているそうだ。
 通学定期の補助、学費の補助、わが社は、ビタ一文補助をしなかった。だから、君たちの中で不満のある者は、申し出なさい。
 補助なんていわない。四年間かかったものは一切合財支払いましょう。いつでも、会計にとりに来なさい。
 但し、君たちは、自分の力でやり遂げたとはいえなくなる。それでいいならネ。”
なんと思いますか、皆さんは。
 これまで補助を申し出た者はいないです。自分の力でやり遂げた時、人は、はじめて満足を覚え誇りを感じつつ納得して、責任をとります。
 俺はやれば出来るのだという自信と、自分独りの力でやり遂げたという喜び、つまり人間としての主体性を社会人としてのスタートにM製作所はガッチリと植えつけるやる。 
 一旦、その喜びを噛みしめたものは、自らかならずやり遂げるよおうになる。その喜びを実感させて人間の主体性の確立を求めている。
 自覚を持たせることが一番の贈物である。と言っている。
 今の日本では、一から十まで親がさしずをして、学費も全部負担してしまい、親の言う通りになる子をいい子だと思っています。
 それだは、人間としての主体性は身につきません。
 自分の判断に基づいて行動し、その結果に責任を取れるような、そういう子にすべきです。
 上司の務めは部下を育てること。親のつとめは主体性のある子を育てること。
 一から十まで指示して、親のいう通りの子にしてはいけません。
 主体的な人間にしむけてやらなければいけません。
 俺は、ついに自分の力でやりとげたという貴重な自覚を持つ人間を育てているのです。
 “たいしたもんだオレは!”
 工業高校の夜間部という実現可能な目標を与え達成の喜びを社長が心から敬意を表すると、褒め上げている。
 一たん、その喜びを知れば人から何もいわれずに問題に挑戦してゆくようになるのです。
 主体的な人間に生れ変るのです。
 これを社長の最大のはなむけとしています。
 M製作所では小グループは五〜六人、大グループは十四〜十五人で思い思いのチームを組んで発明にとり組んでいます。
 自分たちで青写真を作って、図面に従って試作品を作る、できた、これで良しという時にお客様を呼ぶ。
 “お客さん、いくらだったら買いますか?”
 “二〇〇〇万円、もしくは、一五〇〇万円。”
 “じゃあ売りましょう。”
 当番を一人残してこのチームは解散となります。
 当番は、下請に折衝して注文の品を作らせて、納入して代金回収までやってのけます。
 全員がエンジニアであり営業マンで」あり、企画屋でもあります。つまりオールラウンドプレイヤーなのです。


株式会社オフィスエッグHP
コンピテンシートレーニングのエキスパート講師陣!社員教育トレーニングセンター Office EGGは社会人教育・社員教育など、研修・セミナーの企画・運営・実施や経営・組織コンサルティングを主要事業としています。