《人の心をどう育てるのか》

 心とは何でしょうか。辞書では「知・情・意の働くところ」が「心」とあります。今は心の教育はされず、「知」だけです。「情」「意」は無視されています。
 福岡市の井尻には、「しいのみ学園」というところがあります。昭和三十年代に松竹映画がとりあげて、そこの園長先生は昇地三郎先生いいいます。
 この昇地三郎先生は福岡教育大学の名誉教授で医学博士でもあります。重度障害児の研究とりくみ、有名な「ゆさぶりの教育原理」という論文を書き、文学博士にもなられました。文学博士で医学博士・哲学博士でありますが、こういう方は少ないですね。
 皆様方よくご存じと思いますが、武田哲也というタレントさんがいますね、あの方はこの福岡教育大学の出身です。この昇地三郎先生の教え子でございます。
 二十年程前、私はこの昇地先生のご自宅を尋ね、「教育の原理について教えて下さい」とお願いしました。その時に聞いたのがこのお話です。
 人間の心というのは、知・情・意の働くところである。なるほどそうです。ちょっと考えてみて下さい。今の日本の教育は知識だけじゃありませんか。テスト、テスト。進学、進学。「情」「意」が無視されている。「情」「意」が不安定で知識だけをつめこんだらどうなるか、それは単なる悪知識になりやすい。「情」「意」が安定してはじめて人間の正しい知恵が育つのだと。「知」「情」「意」のバランスのとれた人間を育てる。このことが一番肝心なことであると。それが抜けている。
 これはその折、昇地先生に教えていただいたことでありますが、今の日本を見ておりますとまさにその通りですね。


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《モーゼスおばさんの絵》

 その人の名はアンリー・メアリー・モーゼスさんです。通称、グランドママ・モーゼス。日本でいうおしんおばさん。赤貧あらうがごとき生活をして、一二歳の時女中奉公にやられ、奴隷のごとく使われた。
 モーゼスさんは、二十七歳の時に、下男奉公の男と結婚したんです。十人の子供をまずしい中で、一生懸命に育てた。六十七歳の時、夫に死にわかれ、このおばさんは、末っ子の家で裁縫やあみものをして、くらしていたのです。
 七十五歳の時、関節性リュウマチなり、何もできなくなりました。家の中で何かできることはないかと探している時に、たまたま家に置いてあったペンキで板きれに絵を描いた。
 家の外に偶然おかれてあったその絵を通りすがりに見たニューヨークの画商がつかつかと家に入ってきて、
 “絵をかいたのは誰ですか?”
 “うちのおばあちゃんですけど。”
 “あの絵をわけてほしい。専属契約をしたい。絵は思うままどんどん描いて下さい。幾らでも買い入れます。”
 田舎の、年をとったおばあさんが俄然、絵かきとして有名にまりました。
 百一歳で亡くなるまで、幼い日の郷愁を誘う絵を、二十五年間、せっせと描き続けました。その絵がクリスマスカードになって今でも毎年三五〇〇万枚も売れています。
 ルーブル美術館アメリカ人で初めて絵を買いあげられた画家は、アンナ・メアリー・モーゼスおばさんです。
 なぜ、学校のテスト位で人をきめつけてしまうのか。
 山下清知能指数は五十しかない。(国連発表によれば日本人は一二五が知能指数の平です。)
 山下さんはルーブル美術館でいつも個展を開くことを許されている日本で唯一の画家です。
 偏差値というたったひとつの物さしで人を計ってしまう愚かさに気づいてほしいのです。
 この子のもっともよいところはないかと探して下さい。
 その子の個性を引き出すいとなみを、つづけて下さい。実現可能な目標を与え希望を与えて頂きたいのです。


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《可能性の実現化》

 吉田茂主相は、マッカーサー元帥と話し合って、毅然として日米の講和条約をした信念のある政治家です。
 彼が、六十六歳になってからフランスの新聞ル・モンドの新聞を見てフランス語の勉強を始めた。八十九歳で亡くなる時は、フランス語がペラペラだったそうです。
 人間死ぬまでするのが学問で、その歴史が学歴です。
 学校は勉強の仕方を習うところであって、本当の勉強は学校をでてから始まる。死ぬまでつづくのが学歴です。
 徳富蘇峰国木田独歩松本清張、全て、学校歴はありませんが学歴は抜群です。
 M製作所社長は「本人は秘めている可能性は彼も私も一緒なのだ。人間の可能性をいかに引き出すかが、経営者の持つ責任である。」と言っています。
 人と金と物(マン、マネー、マテリアル、三M)といいますが、M製作所は人間が主体の会社でありますので、はりきれば、利益が上がります。すなわち利益を上げるにはまず人間を育てることなのです。
 福沢諭吉の女婿福沢桃介さん、水力発電の鬼といわれた人が、
「事業家は、財産を残しえない人は一人前といえない。」
「財産を残した人よりも偉いのは、立派な事業を残した人だ。」
 立派な事業を残すとは、例えば、水力発電所の第一号機は、福沢桃介が初めて作った。
その木曽川発電所は今だに動き、中部地方に電力を供給しつづけています。
 発電所は福沢桃介が死んだ後も社会のために貢献している。その福沢桃介さんが、
 「経営者のうちもっともえらいのは、立派な人材を育てた人だ」という言葉を残しています。
 利益第一主義は、ダメです。
 各人に生き甲斐や、喜びをもたせ、おれは、出来るんだとやる気を持たせる経営者が一番です。
 やる気を持たせた後みごとな発明集団を作ること。
 M製作所がまさにその実例です。
 人間は、限りない可能性を持っています。
 その生きた一つの例についてお話したいと思います。


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《物理勉強会》

 毎週一度、月曜日に勉強をします。
 どこの会社も月曜日はバタバタするのに、勉強するから仕事しなくてもよいというのはなぜでしょうか
 「物理を勉強しなさい」というのが社長のたったひとつの業務命令です。
 社長は一切命令をしません。全部自由。自主性にまかせ出勤簿はありません。
 自分のことは自分で責任をもって管理します。
 物理とは理埋めで考えるところに重点があります。何んでこうなるのかを考えることに意義があるのです。
 科学する心を育てるために、物理の勉強をやらせている。大学の先生を呼ぶわけではない。チームの代表が替りばんこに出て、説明するし発表する。それを全員で開き、ディスカッションをあうる。これを物理の勉強会という。女子(受け付け嬢)の全員参加である。
 どのチームがどういう研究をしているのか全員が知っている。全員討議の時に、アイデアを出し合う。
 七〜八年前のある年の夏休み、物理の勉強会に、名古屋出身の東大生が帰省して物理の勉強をしていると聞いたM製作所へやってきた。東大理工学部の青年は、見学して驚いた。
 理論が難しくついていけなかったのです。
 天下の東大生が尻尾をまいて逃げたというわけです。
 ある大学のの教授が経済学者の立場で見学に来た時も驚いた。社員のほとんどが東大の物理学科をパスするだけの学力を身につけていたのです。マサチューセッツ工科大の講義録をとって勉強しているのです。
 これ程、優秀な社員がそろっていれば、七〇〇件を越す発明が生れても当然である。
 中卒の若者たちをよくもここまで育て上げたものです。
 特許庁の役人がどんな会社かと、見にきて舌をまいて驚いた。
 学校歴はなくても学歴は抜群です。
 レッテルで人物を評価してしまうのはあやまった考えなのです。




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《夜間部卒業》

 定時制高校の四年生を卒業すると、社長がお祝をしてくれる。四〜五人の卒業生のお祝をして、社長が「よく、頑張った、お祝い」といって新調の背広を一着ずつ出します。
 “四年間学費はどうしたかね。”
 “給料でまかないました。”
 “通学定期は?学用品は?参考書は?”
 “全部供与でまかないました。”
 “君たちは立派だ。世の子供達が親の世話で高校へ行く時代に自分のお金で高校を卒業した。自分の力だけでやりとげた。心から敬意を表する。ところで、聞くところによれば、世間の会社はいろいろと補助をしているそうだ。
 通学定期の補助、学費の補助、わが社は、ビタ一文補助をしなかった。だから、君たちの中で不満のある者は、申し出なさい。
 補助なんていわない。四年間かかったものは一切合財支払いましょう。いつでも、会計にとりに来なさい。
 但し、君たちは、自分の力でやり遂げたとはいえなくなる。それでいいならネ。”
なんと思いますか、皆さんは。
 これまで補助を申し出た者はいないです。自分の力でやり遂げた時、人は、はじめて満足を覚え誇りを感じつつ納得して、責任をとります。
 俺はやれば出来るのだという自信と、自分独りの力でやり遂げたという喜び、つまり人間としての主体性を社会人としてのスタートにM製作所はガッチリと植えつけるやる。 
 一旦、その喜びを噛みしめたものは、自らかならずやり遂げるよおうになる。その喜びを実感させて人間の主体性の確立を求めている。
 自覚を持たせることが一番の贈物である。と言っている。
 今の日本では、一から十まで親がさしずをして、学費も全部負担してしまい、親の言う通りになる子をいい子だと思っています。
 それだは、人間としての主体性は身につきません。
 自分の判断に基づいて行動し、その結果に責任を取れるような、そういう子にすべきです。
 上司の務めは部下を育てること。親のつとめは主体性のある子を育てること。
 一から十まで指示して、親のいう通りの子にしてはいけません。
 主体的な人間にしむけてやらなければいけません。
 俺は、ついに自分の力でやりとげたという貴重な自覚を持つ人間を育てているのです。
 “たいしたもんだオレは!”
 工業高校の夜間部という実現可能な目標を与え達成の喜びを社長が心から敬意を表すると、褒め上げている。
 一たん、その喜びを知れば人から何もいわれずに問題に挑戦してゆくようになるのです。
 主体的な人間に生れ変るのです。
 これを社長の最大のはなむけとしています。
 M製作所では小グループは五〜六人、大グループは十四〜十五人で思い思いのチームを組んで発明にとり組んでいます。
 自分たちで青写真を作って、図面に従って試作品を作る、できた、これで良しという時にお客様を呼ぶ。
 “お客さん、いくらだったら買いますか?”
 “二〇〇〇万円、もしくは、一五〇〇万円。”
 “じゃあ売りましょう。”
 当番を一人残してこのチームは解散となります。
 当番は、下請に折衝して注文の品を作らせて、納入して代金回収までやってのけます。
 全員がエンジニアであり営業マンで」あり、企画屋でもあります。つまりオールラウンドプレイヤーなのです。


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《子は親の鏡》

教育というものは、英語のエディケイト、エデイケイション。「教育」という言葉の本来のラテン語は引き出すという意味です。何をひき出すか。本人も気づいていない可能性をひき出す。潜在能力を引き出すいとなみを教育という。
 大哲学者ソクラテス、そのソクラテスは自分の教育のことを産婆術と名付けています。
 産婆術―若者達と対話しながら産婆術といった。母体の中から赤ちゃんをひき出す。対話しながら、その中に潜んでいる可能性を引き出してやる術のことです。
 日本のやっているのは、つめ込み教育でテストの答えをつめ込む、答え方をつめ込む、答え方のみなのです。
 疑問の点を学ぶのが学問です。答え方のみは学答です。引き出すのではなくつめ込み。狂ってしまっている。物事の本質がまちがっている。
 本人の中にある才能を鵜の目鷹の目で探して、ほめてやる。一週間ほめてやってごらんなさい。明日から子供は変ります。
 子は親の鏡といいます。
 ねぼけ眼こすりながら、鏡を見ると、ロクな顔をしていないでしょう。こっちがきれいになると鏡もキレイになるでしょ。映す鏡ですから、こっちがきれいにならないで、子供だけに要求しても無理。子は親の鏡。
 子供に変わってほしいなら、こっちが変わればよいのです。
 人間関係全部そうです。
 態度をかえればよいのです。相手を変えようよ思ったら、鵜の目鷹の目で良い所を探し
 ”アンタこんなイイ所があるよ。”というのです。感心してしまうと相手は変わります。
 ”この頃オフクロ変化したナア。”って。
 お母ちゃん、お母ちゃんて何んでも言うようになります。
 ”ダメネー”というからいわなくなります。
 親がまず態度をかえることです。子は親の鏡ですから。
 賞めてその上にプラス情報を与えて下さい。アンタはいい子だとフロイドの母のように言いつづけてみて下さい。
 かならず立派な人になります。
 職場の人材育成、後継者の育成、皆んなこの原理を理解して下さい。次にひとつの例を挙げます。

《M製作所の例》

 部下を育てるのも、目標を達成する、その喜びを励ましてあげるのが一番の良法です。
 賞めるのがキーポイントです。これを企業の経営に応用している会社が愛知県にあります。
 豊橋市の近くにあるM製作所。資本金が九〇〇〇万円。従業員百十五名。中小企業ですが機械の発明にとり組み企業を発展させて来ました。
 新案特許の申請が現在千件を超えている会社です。
 大体、年間五十件の割で、特許申請してます。昨年は九五〇件、その前年は九〇〇件というわけ。一年は五十二週ですから一週間に一件の割合で出していることになります。
 発明機械を世界三八ヶ国に輸出してます。
 輸出産業は、円高のデメリットをうけます。
 貿易黒字を解消するため当時の大蔵大臣の竹下登は円のレートを高くして二五六円あれよあれよで一三七円。
 三年前は二七六円位のものが今は一〇六円で、買えます。
 輸入業者は大儲け、輸出業者は泣くに泣けない。円高打撃倒産が続いています。
 経済企画庁が発表していますが、多くの企業が廃業に追いこまれているのです。
 倒産ではなく廃業です。しかし、M製作所は世界でどこも作っていないものを製作する会社ですの、円高に影響されません。
 相変らず悠々としてやっている。七五名が株主、年四割配当を二十年以上つづけている。高給取りで高率配当。
 まず社内蓄積をしています。総資本百十億円の内自己資本九十億円。
 財テクなどせず、きちんと発明し高収益をあげて、社内留保分を高めているのです。社員の内七五名が、中学卒業者、地元の人たちです。
 大卒は五〜六人しかいません。なぜ義務教育しか受けていない人が発明集団、頭脳集団を形成するにいたったか。どういう方法をとったか。
 M製作所は毎年入社希望でやってくる中学生に社長が面接の時こういうのです。
 ”四〜五人もしくは、二〜三人しか取りません。”
 ”正直で素直な子を採用している。”
 ”解らないことは解りません。とすぐ正直に言える人を採用する。”
 ”君達、うちの会社に入ったなら工業高校の夜間部に行きなさい。行かない物は採用しません。”
 社員は当然工業高校の夜間部に進学します。
 会社はビタ一文も学費を援助しない。
 高校に自前でいけるだけの給料を新入社員にでさえ、払っているからです。